<流れ>
①かっこを振っていない英文
②単語注(①でアスタリスクを振ったところ)
③設問
④かっこを振った英文
⑤設問の答え
⑥訳

はじめまして。ウェストリッジだ。このコーナーでの解説役、兼、小説中の語り手を担当するぞ。
小説中で語り手の名前が出てくることはないが、メタい話こういうセリフのところで困るから、便宜上ウェストリッジと名乗っているのだ。さらにメタいことを言うと、GuP西住まほの『宇宙戦争』での仮名だと思ってもらっていい。
どうぞよろしく!
『宇宙戦争』概略

『The War of the Worlds』(邦題『宇宙戦争』)は、1898年、イギリスのH. G. Wellsによって書かれたSF小説だ。
1900年ごろ、ロンドン近郊に火星人が侵攻してきたときの騒動を、数年経って語り手(わたし)が回想して書いている物語になるぞ。
この小説では1900年のイギリスの時代背景・地名・役職名といったものが豊富に登場する。そうしたものを把握しながら読み進めることが重要になるし、逆に言えばこの小説から時代情勢を学ぶこともできるのだ。
この1900年という時代はイギリスではヴィクトリア朝末期にあたり「帝国主義」の全盛期。イギリスは植民地を増やし続けている地球最強の国家だ。そして、侵攻してくる火星人は科学技術が発達した、太陽系最強の存在だ。地球最強VS太陽系最強の戦いだから、ギル様VSバーサーカーみたいにロマンあふれる戦いではあるが、一つ大事なことがある。それは、「火星人ーイギリス」の力関係が、「イギリスー植民地・動物」の力関係と一致しているということだ。これが序盤のひとつ大きなテーマとなるから覚えておいてほしい。

ともあれ、この小説は上下巻に分かれ、全部で27章あるそこそこの長編となっている。
さっそく始めていこう。
BOOK ONE.—THE COMING OF THE MARTIANS
上巻 ー 火星人の襲来
I. THE EVE OF THE WAR.
第1章「戦争前夜です!」
第1章 第1段落

第1章(特に第1段落)が一番難しい段落だ。面倒だったら日本語訳だけ読んで次に行ってくれ。第2章くらいになれば、わりと読みやすくなってくるし。
前半部
※一段落が長いので、2つに分けてます。
前半部 問題編
No one would have believed in the last years of the nineteenth century that this world was being watched keenly* and closely by intelligences greater than man’s* and yet* as mortal* as his own ; that as men busied themselves* about their various concerns* they were scrutinised* and studied, perhaps almost as narrowly* as a man with a microscope might scrutinise the transient* creatures that swarm* and multiply* in a drop of water. With infinite complacency* men went to and fro* over this globe about their little affairs, serene* in their assurance* of their empire over matter. It is possible that the infusoria* under the microscope do the same.
keenly鋭く man人間 yet≒but mortal死ぬ運命にある busy oneselfせわしく動く concerns懸念 scrutinise精査する narrowly念入りに transientはかない swarm群れる multiply増える complacency独善 to and froあちこち serene平和な assurance保証 infusoria繊毛虫類(※古い概念。水生微生物。)
1. オレンジ色の「and」が繋いでいるのは?
2. 赤色の「;」が繋いでいる部分は?
3. ピンク色の「as」の意味は? この節が終わるのはどこまで?
4. 青アンダーライン(1文目)の訳は?
5. 赤アンダーラインの部分の訳は?
6. 茶色の「it」が指しているものは?

こちらが「infusoria」の一例。infusoriaはミドリムシとかミジンコの総称だと思ってくれ。

https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=39165000
前半部 解答編
<英文解釈記号ルール>
〔〕→関係詞句・節
【】→接続詞句・節
《》→挿入句・節
[ ] →名詞句・節
()→副詞句・節
〈〉→形容詞句・節
No one would have believed (in the last years of the nineteenth century) [that this world was being watched keenly* and closely (by intelligences 〈greater than man’s*〉 and yet* 〈as mortal* as his own〉) ; [that 【as men busied themselves* about their various concerns*】 they were scrutinised* and studied, (perhaps almost as narrowly* as a man 〈with a microscope〉 might scrutinise the transient* creatures 〔that swarm* and multiply* in a drop of water〕). (With infinite complacency*) men went (to and fro*) over this globe about their little affairs, (serene* in their assurance* of their empire 〈over matter〉). It is possible [that the infusoria* under the microscope do the same].
1. オレンジ色の「and」はgreater~とas~の2つの形容詞句を繋いでます。2語以上は後置修飾ですね。
2. 赤色の「;」は、have believedから繋がる2つのthat節を繋いでます。
3. ピンク色の「as」は「~のとき」「~の間」という意味。concernsでas節が閉じますね。
4. 青アンダーラインの訳は全訳参照。仮定法に注意しましょう。「in the last years of the 19C」 に「if」の意味が内蔵されてます。文章が長いので、セミコロン(;)などで切りながら訳していきます。heやthey代名詞が多いですが、「彼」「彼ら」という表現を使いすぎると日本語として気持ち悪くなるので、ときにはもとの名詞のまま繰り返してもいいと思います。
5. 赤アンダーラインのserene以下は分詞構文。beingが抜けた形です。overは「覆う」イメージでいいんじゃないですかね。
6. 茶色の「it」が指しているものは、うしろのthat節。形式主語ですね。
前半部 全訳
19世紀の終わりごろには、知的生命体がわたしたちの世界を鋭く間近で見ていたことは誰も信じていなかっただろう。その生命体は人間と同じく不死ではないものの、人間よりも強大だった。人間が様々な関心事にかまけている様子を彼らが調査研究していたとは、地球の誰が予想しただろうか。水底で群生し増殖する小さい生物の様子を人間が顕微鏡で観察するのと同じように、わたしたちを細かく調べていたのだ。
人類は危機にも気づかず果てしない満足感に浸り、ほんの些細なことについて地球じゅうを行ったり来たりしていた。物質を支配する人間の帝国は揺るがないと信じ、平和に過ごしていた。顕微鏡の下のミドリムシと同じようなものだろう。

やはり「地球じゅうを行ったり来たり」という表現からも、帝国主義的背景が見えると思う。ここでの「人間」は人類一般というよりは「イギリス国民」と見てあげるとより分かりやすいかな。
後半部
後半部 問題編
No one gave a thought to* the older worlds of space as sources of human danger, or thought of them only to* dismiss* the idea of life upon* them as impossible or improbable*. It is curious to recall* some of the mental habits of those departed* days. At most terrestrial* men fancied there might be other men upon Mars, perhaps inferior to themselves and ready to welcome a missionary enterprise*. Yet across* the gulf* of space, minds* that are to our minds as ours are to those of the beasts* that perish*, intellects* vast and cool and unsympathetic*, regarded* this earth with envious* eyes, and slowly and surely* drew their plans against us. And early* in the twentieth century came the great disillusionment*.
give a thought to≒think(ここでは後ろのasと呼応して「みなす」) only to V結局~するだけだ dismiss~as… …だとして~を捨て去る upon=on improbableありえない recall思い返す departed過去の(cf. depart出発する) terrestrial地球上の missionary enterprise(宗教などの)伝道事業 across向こうで gulf深淵 mind(知性を持つ)人 beast獣 perish滅びる intellect知性 unsympathetic同情的でない regard見る envious羨ましい surely確実に early in [時代]~初期 disillusionment幻滅
7. 紫色の「or」が繋いでいる部分は?
8. 灰色の「them」が指しているものは?
9. 赤色の「it」が指しているものは?
10. ピンク色の「themselves」が指しているものは?
11. 赤色アンダーラインが引かれた部分の主語と動詞は?
12. 緑色の「as」の品詞は?
13. 青色の「those」が指しているものは?
14. 青色アンダーラインが引かれた部分の主語と動詞は?

「older worlds」って何だろうと少し気になるかもだが、「星雲説」という考えがもとになっている。次段落で説明しているぞ。
そして文中に出てくる「minds that are to our minds as ours are to those of the beasts」はこのページの最初で言った通り、「火星人ーイギリス」の関係が「イギリスー植民地・動物」の関係と一致している、ということを表している。ここをポイントに訳していこう。
後半部 解答編
<英文解釈記号ルール>
〔〕→関係詞句・節
【】→接続詞句・節
《》→挿入句・節
[ ] →名詞句・節
()→副詞句・節
〈〉→形容詞句・節
No one gave a thought to* the older worlds of space as sources of human danger, or thought of them (only to* dismiss* the idea of life upon* them as impossible or improbable*). It is curious [to recall* some of the mental habits of those departed* days]. (At most) terrestrial* men fancied [there might be other men upon Mars, (perhaps inferior to themselves and ready to welcome a missionary enterprise*). Yet (across* the gulf* of space), minds* 〔that are (to our minds) 〔as ours are (to those of the beasts*) 〔that perish*〕〕〕, 《intellects* 〈vast and cool and unsympathetic*〉》, regarded* this earth with envious* eyes, and slowly and surely* drew their plans against us. And (early* in the twentieth century) came the great disillusionment*.
7. 紫色の「or」が繋いでいるのは、文法上はgaveとthought。ただ、orのあとは「or even if they thought of them, they dismissed…」という風に解釈してあげると良いと思います。
8. 灰色の「them」が指しているのは、the older worlds。
9. 赤色の「it」が指しているものは、to以下。形式主語。
10. ピンクの「themselves」が指しているものは、terrestrial men(地球人)。再帰代名詞は文章の主語を指すことが多いから、まずはそこをチェックしましょ。
11. 赤色アンダーラインが引かれた部分の主語と動詞:mindsが主語、regardedが動詞。
12. 緑の「as」は関係詞。「Words are to the translators what facts are to the journalist.」(翻訳者にとっての言葉はジャーナリストにとっての事実と同じだ)のような構文を高校で習ったかもしれません。
その「A is to B what C is to D」(AのBに対する関係はCのDに対する関係に相当する)のwhatはasに置き換わることがあります。ここでは「(Martian) minds are to our minds as[what] ours(=our minds) are to the minds of the beasts」ですね。最初のmindsをthat節で説明する形になってます。mindsの意味はここでは幅広く「知性(をもったもの)」としてとらえていいかもしれません。
また「intellects* 〈vast and cool and unsympathetic*〉」は挿入部分。mindsと同格。ここが第二のポイントですね。
13. 青色の「those」が指しているものは、the minds。the+複数形=those
14. 青色マーカーが引かれた部分で、主語はthe great disillusionment, 動詞はcame。第一文型倒置のMVS。
後半部 全訳
太古の宇宙世界が人間に危険をもたらす原因となると思っている人は誰もいなかった。宇宙の世界を考えたとしても、宇宙に生命がいるなんて絶対ありえない、もしくはほとんどありえないだろうと思って、宇宙生命体の存在は否定していた。こんな過去の日々の思考習慣を思い出すのは興味深いことだ。地球人はせいぜい「火星には他の人型生命がいるかもしれないが、きっと自分たちより劣っていて、植民地化をいつでも歓迎してくれるんだろう」って妄想してたくらいが関の山だろう。だが宇宙の深淵の向こう側にいた生命とわたしたちの力の差というのは、わたしたちと滅びゆく動物の力の差ほどもあったのだ。彼らは強大で冷酷にして情け容赦ない知的生命体だった。この地球をねたましげに見つめて、ゆっくりと確実に人類に対する計画を練っていたのだ。そして20世紀の初め、わたしたちの幻想は大きく崩れることになった。

①impossibleは「絶対ない(0%)」で、improbableは「ありそうにない(数%)」って感じだな。
②missionary enterpriseは直訳すると「宗教の伝道事業」だが、過去の歴史とかも踏まえると、要するに「植民地化」ってことだ。
あと、「regarded this earth with envious eyes」とある。直訳すれば「地球をねたんだ目で見つめて」だが、心情を表すはずの形容詞が別のものを修飾して、間接的に心情を表すことがある(転移形容詞という)。英語ではたまに見かける表現だ。
日本語でも、(ほぼ成句だが)「苦杯をなめた」の「苦」が転移修飾にあたるのではないか。
ともあれ、ここでは「regarded this earth enviously」と考えて、「妬ましげに地球を見つめていた」とすると日本語としてすっきりするだろう。
ちなみに、最終文「early in the twentieth century」とあるから、この物語の舞台は1901~1910年あたりだということが推測できるな。

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