『宇宙戦争』の和訳・英文法解説です。
<流れ>
①かっこを振っていない英文
②単語注(①でアスタリスクを振ったところ)
③設問
④かっこを振った英文
⑤設問の答え
⑥訳
第1章 第9段落

前段落は、1894年のopposition(衝)とそれに続く2回の衝で、ロケット発射台の建造が見られたという話だった。そしてこの段落では発射台建造が完了し、いよいよロケットが発射されるぞ。
問題編
The storm* burst upon* us six years ago now. As Mars approached opposition, Lavelle of Java* set the wires* of the astronomical exchange palpitating* with the amazing intelligence* of a huge outbreak of incandescent* gas upon the planet. It had occurred towards midnight of the twelfth; and the spectroscope*, to which she had at once resorted*, indicated a mass of flaming gas, chiefly* hydrogen, moving with an enormous velocity towards this earth. This jet of fire had become invisible about a quarter past twelve. She compared it to a colossal* puff* of flame suddenly and violently squirted* out of the planet, “as* flaming gases rushed out of a gun.”
storm騒動 burst upon突然起こる Lavelle of Javaジャワ島のラヴェル(人名) wire電報 palpitateドキドキする intelligence情報 incandescent高温で光る spectroscope(<spectrum+scope)分光器 resort to~に頼る chiefly主に colossalとっても大きい puffひと吹き squirt吹く as~のように(カギカッコでくくってるのは、ラヴェルが送った電報の内容だからかな)
1. オレンジの「palpitating」はどんな働き?(品詞は?)
2. ピンクの「the twelfth」の意味は?
3. 青の「it」が指しているものは?

今回の「opposition」(衝)では、ついに火星人侵攻部隊が乗ったロケットが発射されたわね。
こうした衝付近では地球との距離が最も近くなるから、地球へと向かう宇宙船を打ち出すのにちょうどいいってことよ。
火星探査機の打ち上げについての以下のNASAのサイト・画像を見ても、たしかに衝付近で打ち上げていることがわかるわ。
https://mars.nasa.gov/mars2020/timeline/cruise/


さて今回の「opposition」の年を特定してみよう。
前段落から、少なくとも1899年の衝まではロケット発射台を建造していたことがわかっているからそれ以降だ。
それで、数段落後に「火星は4000万マイル離れていた」(≒6500万㎞)という記述があるから、6146万㎞離れていた1907年の衝だということがわかるぞ。
補強証拠もある。1907年の衝は7/6で、最接近は7/13。「衝」の日付はあくまで目安で、特定の一日ではなくある程度の期間があるものだから、この段落中の「midnight of the twelfth」(12日の真夜中)という記述にもぴったり当てはまる。さらに、「warm / thirsty」という表現が第14話で出てくるから7月という季節もぴったりだ。
衝のデータ出典:https://stjerneskinn.com/mars-at-opposition.htm


1907/07/12~21にかけて火星を出立したことがわかったから、侵攻が始まった年も絞り込めそうね。
まず、後の章の記述から、季節的には6月に侵攻があったことが判明しているのよ(上巻第17章・下巻第3章)。
そして21世紀の地球技術だと地球から火星までは最短半年だけど、かなり巨大な有人宇宙船だったことも加味すれば、11か月かかってもおかしくないわ。
ということで、1908年06月に地球侵攻が始まったとみていいわね。ちなみにもうちょっと章が進めば曜日の関係から日付まで特定できるけど、そのときが来たらやろうかしら。

ともあれ、H. G. Wellsさんは出版(1898年)から10年後の世界を舞台にしているんだ。
ただ、H. G. Wellsさんがいる世界は1898年だから、地図や時代常識は1898年で見なければいけないことは忘れないようにしよう。
P.S. 言い忘れていたが、1文目に「six years from now」とあるから、わたしウェストリッジがこの回想を書いているのは1907+6=1913年ということになる。ちょうど第一次世界大戦勃発間近だな。
解答編
<英文解釈記号ルール>
〔〕→関係詞句・節
【】→接続詞句・節
《》→挿入句・節
[ ] →名詞句・節
()→副詞句・節
〈〉→形容詞句・節
The storm* burst upon* us six years ago now. 【As Mars approached opposition】, Lavelle of Java* set the wires* of the astronomical exchange (palpitating* with the amazing intelligence* of a huge outbreak of incandescent* gas upon the planet). It had occurred towards midnight of the twelfth; and the spectroscope*, 《to which she had at once resorted*》, indicated a mass of flaming gas, 《chiefly* hydrogen》, 〈moving with an enormous velocity towards this earth〉. This jet of fire had become invisible about a quarter past twelve. She compared it to a colossal* puff* of flame 〈suddenly and violently squirted* out of the planet〉, “as* flaming gases rushed out of a gun.”
1. オレンジの「palpitating」は分詞構文。意味から「ドキドキしながら」という風にとれますね。
2. ピンクの「the twelfth」は「12日」。序数は日付です。「12時」じゃないですよ。midnight(深夜12時)があるから、重複してますし。
3. 青の「it」が指しているものは、this jet of fire.
今から6年前、騒動は突然起こった。火星が衝の位置に到達したとき、ジャワ島のラヴェルは、高温で光るガスが火星上で大量に発生したという驚くべき情報にドキドキしながら、天文学者間で情報共有するために電報を打った。それは12日の夜0時になろうとしている頃に起こった。ラヴェルはすぐに分光器に頼ったが、燃え立つガスのかたまり(主に水素)がこの地球に向かってものすごい速さで動いていることを示していた。この猛スピードの炎は0時15分ごろには見えなくなった。ラヴェルは激しく突然火星の外に向けて噴出されたこの炎を「大砲の外に噴き出して燃えるガスのようだ」とたとえた。

高温気体は、以下の画像のように元素固有の線スペクトルを示すの。理系なら高校物理で習うかしら。リュードベリの理論がここ10年くらいの間(1890年ごろ)に出てきたわ。
ともあれ分光器でどんな波長の光が出るか調べれば、どんな元素が含まれてるかわかるってわけ。今回の線スペクトルは水素、つまりロケットエンジンの燃料を示してるのよ。


…原子物理を習い終わった人がこんな記事読むかな?
ともあれこの炎の様子を例えた最終文「”as flaming gases rushed out of a gun”」(大砲を撃つときに噴き出す燃えるガス)は、「マズルフラッシュ」のことだ。
以下にメルカバ戦車のマズルフラッシュの様子を出しておこう。


(ようやくこのシリーズタイトルを回収できたわね)
基礎的なことだけど、第二次大戦のころの戦車砲の先っぽについてるキャップみたいなもの(マズルブレーキ)はそのガスを逃がして反動を抑えるためのものよ。



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