『宇宙戦争』の全訳・英文法解説です。
XⅢ. HOW I FELL IN WITH THE CURATE.
第13章 アンドリューシャちゃんとの邂逅です!
※fall in with~と偶然出会ってかかわりを持つ
第13章 第1段落
第12章までの『宇宙戦争』

自己紹介ネタも尽きたし、担当国旗・国章紹介、ひとことずつやろっか。
あ、念のため一応言っとくけど、担当国設定は『宇宙戦争』小説中では一切関係ないからな。会話編だけの設定だからな。
ともあれ、まずわたし。運だけは強い社会学者ウェストリッジだ。


国章は黒鷲だ。神聖ローマ帝国時代は双頭の鷲だったんだが…。

(1871~1918:ドイツ帝国)(↑1914年の領土)

ユニオンフラッグに栄光あれ。リッちゃんの奥さんのタージルムよ。


国章にはユニコーンとライオンが書いてあるわ。がおー。

(1801~1922:グレートブリテン及びアイルランド連合王国)

トリコロールの白は王家の色、赤青は帽章由来らしいにゃ。どうもステファニーにゃ。


じつはフランスに公式国章はないにゃ。
(1870~1940:第三共和政)

イタリア国旗はトリコローレって言うんだぜ、とオギルヴィーナだ。


サルデーニャ王国のサヴォイア家の紋章が元となっているぞ。
(1861~1946:イタリア王国)

ハロー、ヘンスリーだよ! Old Glory(星条旗)はいっぱいアップデートしてるよ!


(↑1896~1908:星45個の星条旗)
国章に描かれてるのはハクトウワシだね!

こんにちは!シルカです!


大日本帝国時代は、軍旗はあの旭日旗でしたが、外交上はこっちの普通の日の丸です。

やっほー。ミーカライネンだよー。
フィンランドはこれなのだ。



おいまて、それロシア帝国じゃないか。

だって、フィンランドはロシア帝国領だったのだから仕方ないじゃないか(1809~1917)。そのまえはスウェーデン領だったし。

ま、ほぼほぼ独立国みたいなフィンランド大公国だったけどね。
とゆーことで最後に、ちょっと部外者みたいなデナリスです。

それじゃ、かんたんに流れを振り返っていきましょうか。
1907/07/12~21:火星人の宇宙船10隻が火星を出発。(第1章)
1908/06の金曜日早朝:宇宙船1隻目がウォーキングのホーセル共有地に着陸し、野次馬と交渉団をレーザー兵器で殺戮。(第2章~第7章)
金曜深夜:2隻目がホーセル共有地付近に着陸。(第8章)
土曜午後:イギリス陸軍と火星ロボットの間で戦闘開始。近くに住むリッちゃんは妻のターちゃんを連れてレザーヘッドに避難。(第9章)
土曜深夜:ターちゃんは再び自宅に戻る。その帰り道、すぐそばに3隻目が着陸(第10章)
日曜:リッちゃんは現役兵士のミッちゃんとロンドン方面へ。道中のシェパートンにて5体の火星ロボットとイギリス軍が交戦し、ロボを1体破壊された火星軍はホーセル共有地へ撤退。(第11章~第12章)
ということで、いまは日曜午後ね。
アンドリューシャちゃんとイングランド国教会

さて、もうタイトルで書いてしまってますけど、この章でリッちゃんと出会うアンドリューシャちゃんです。

やあやあ皆の衆。アンドリューシャよ。
『宇宙戦争』では、イングランド国教会(Church of England)の curate(助任司祭)として登場するからね。えらいんだからねっ。
GuPカチューシャだから、カチューシャ多連装ロケット砲が進化したアンドリューシャ多連装ロケット砲から名前をとってみたわ。
とーぜん、担当国家はロシア・ソ連よ。1900年ごろはまだロシア帝国。陸軍では世界最強だったんだから。
国旗と国章はさっき紹介したからいいわよね。国章は双頭の鷲よ。ひとつ頭よりつよいはずね。

…それで、リューちゃんの役職「curate」は、小教区(parish)を管轄する小教区司祭(parish priest)の補佐職だよな。
(※以後、イングランド国教会(イギリスでの最大宗教)のみを扱うぞ。他の宗派では訳語や概念が違う場合があるから気を付けるんだ。)
(※以後の内容の参考:https://www.crockford.org.uk/1269.aspx)

有能な補佐官もできるわたしったら天才ね!

あれ、「curate」ってそんなに高い階級ですか?

いや。ぜんぜん。
りゆう①:「parish(小教区)」は、ふつう1つの教会がかんりする地域よ。イングランドこっきょうかいには12000以上も小教区があるわ。ということで、curateはわりとありふれた役職ね。
りゆう②:curateは聖職者位(Holy Orders)において序列最下位の「deacon(執事)」か, 序列が下から2番目の「priest(司祭)」(の、なりたて)が務める仕事よ。
価値ある仕事だけど、位を自慢できるような偉さじゃないわね。

うるさいうるさい

なおイギリス陸軍で例えると、curateは小隊長、つまり中尉クラスですにゃ。

いままでの話をまとめて、陸軍と対応させた表を作ってみたよ!
ざっくりと、小隊長↔助任司祭、中隊長↔小教区司祭、大隊長↔教区主教、連隊長↔管区主教 にあたると思っておけばいいのかなっ。


ありがと。ちょっと補足しておこう。
補足① 聖職者の位は、deacon(執事)→priest(司祭)→bishop(主教)の順番になっている。先述のように、この3つの位の順番を「Holy Orders」という。
そして、archbishop(大主教)は、主教の中でもさらに偉い階級だ。
なお参考までに、日本の正教会系では、Holy Ordersの三職の総称として「神品」という訳語を使ったりしている。

だから、正教会系で、聖職者任命の儀式を行うことは「神品機密を執行する」とよぶわ。
(正教会といえばロシアだから、正教会系はわたしが担当させてもらっていいわよね)

なんだそのフレーズは。かっこよさが他の中二ワードとは段違いだ!

だな!
あと補足②:小教区は全42の教区の下部組織にあたるぞ。教区もまた、南部の30教区はカンタベリー管区、北部の12教区はヨーク管区に属しているんだ。
そして、カンタベリー管区のトップである「カンタベリー大主教」はイングランド国教会の事実上のトップでもあるぞ(厳密に言えば、国教会は国王がトップ)。21世紀でも貴族院に議席を有する役職だ。ここまで来ると逆に偉すぎるな。
(↓カンタベリー大主教の紋章)

問題編
After getting this sudden lesson in the power of terrestrial* weapons, the Martians retreated* to their original position upon Horsell Common; and in their haste, and encumbered* with the debris of their smashed companion*, they no doubt overlooked many such a stray* and negligible* victim ( ) myself. Had they left their comrade* and pushed on forthwith*, there was nothing at that time between them and London ( ) batteries* of twelve-pounder guns, and they would certainly have reached the capital ( ) advance of the tidings* of their approach; as sudden, dreadful*, and destructive* their advent* would have been as the earthquake that destroyed Lisbon a century ago.
terrestrial(<terra地球)地球上の retreat退却する encumber妨げる(be encumbered with~に妨げられる) companion仲間 stray迷子の・はぐれた negligible(<neglect) 取るに足らない comrade戦友 forthwithすぐに battery砲兵中隊 tidings知らせ(常に複数形) dreadful恐ろしい destructive(<destroy)破壊的な advent到来
1. 緑のmanyの後に省略されている一語は?
2. オレンジのカッコ内に入る前置詞一語は?
3. 紫のカッコの中に入る前置詞一語は?
4. 青のカッコの中に入る前置詞一語は?
5. 赤アンダーラインの文型表示は?

さて、最終文に「earthquake that destroyed Lisbon a century ago」とある。
これはもちろん、リスボン地震(1755年)のことだな。


ポルトガル沖で発生したM8.5~9.0の地震(関東大震災よりマグニチュードが大きい)で、さらに津波・火災も続き、ポルトガル首都のリスボンはほぼ完全に壊滅、数万人の死者が出たのだ…。

この地震はポルトガルだけでなくヨーロッパ全体に衝撃を与えたにゃ。政治・科学など様々な点で近代(1800年ごろからの時代)の制度が始まるきっかけになったのにゃ。

はるか遠くロシアまで影響を与えたと言われてるわ。

お、そうか。じゃあここ読んでくれ。
Она знает, например, про кой-кого из мордасовцев такие капитальные и скандалезные вещи, что расскажи она их, при удобном случае, и докажи их так, как она их умеет доказывать, то в Мордасове будет лиссабонское землетрясение.
↑ Дядюшкин сон (伯父さまの夢)(ドストエフスキー, 1859年)第1章より。赤色の部分が「リスボン地震」。

うう、う。いじわる。

よしよし。ロシア語はまだ読めないもんな。泣くな泣くな。英訳バージョンも示しとくから。
Maria Alexandrovna knew many deadly and scandalous secrets of certain other Mordasoff inhabitants, which, if she liked to reveal them at any convenient opportunity, would produce results little less terrible than the earthquake of Lisbon.
※Maria Alexandrovna:女性の名前。 Mordasoff:町の名前。

泣いてないもん!

ま、こちらの本でもリスボン地震が大惨事の比喩として使われていることがわかれば大丈夫じゃないかなぁ。
地震によって壊滅したポルトガル首都、火星人(天災だよね)によって壊滅するイギリス首都。当時のポルトガルは海上帝国、いまのイギリスも海軍王国。ほんとにぴったりの対比だな。
解答編
<英文解釈記号ルール>
〔〕→関係詞句・節
【】→接続詞句・節
《》→挿入句・節
[ ] →名詞句・節
()→副詞句・節
〈〉→形容詞句・節
(After getting this sudden lesson (in the power of terrestrial* weapons)), the Martians retreated* (to their original position upon Horsell Common); and (in their haste), and (encumbered* with the debris of their smashed companion*), they 《no doubt》 overlooked many 〈such a stray* and negligible* victim as myself〉. 【Had they left their comrade* and pushed on forthwith*】, there was nothing (at that time) (between them and London) but batteries* of twelve-pounder guns, and they would certainly have reached the capital (in advance of the tidings* of their approach); as sudden, dreadful*, and destructive* their advent* would have been as the earthquake 〔that destroyed Lisbon a century ago〕.
1. 緑のmanyのあとに省略されてる単語はpeople。many people…と続きます。
2. オレンジのカッコ内に入る前置詞一語はas。such A as B (BのようなA)の形ですね。
3. 紫のカッコの中に入る前置詞一語はbut。nothing but~(~以外なにもない)の形です。
4. 青のカッコの中に入る前置詞一語はin。in advance(前もって)ですね。
5. 赤アンダーラインの文型表示は、CSVの第二文型倒置っぽいやつです。CVSにすると動詞の塊(would have been)がでかすぎてめんどうなので、CSVの語順になったのかなぁと思います。
全訳
地球の兵器の威力を見せつけられ、突然手痛い思いをした火星人たちは、ホーセル共有地にある元の場所に退却した。彼らは急いでいたし、破壊された僚機の残骸がじゃまだったこともあり、わたしのように仲間とはぐれた取るに足らない多くの避難民を見落としていたに違いない。もし戦友を置いたままにして、すぐに進撃を続けていれば、このときロンドンへのルート上にいたのは12ポンド砲の数個中隊だけだったから、火星人襲来の知らせが届く前に確実に首都に到達していただろう。火星人ロボットが出現すれば、1世紀前にリスボンを壊滅させた地震と同じくらい青天の霹靂のことで、ひどく破壊的なものになったはずだ。

火星人、一度撃退してるんですね!

イギリス軍なら当然のことよ。
ま、火星人も、まさか1機でもやられるとは思っていなかったでしょうね。やられたロボットを運んだままさらに戦闘に突入するのは危険だし、こんなに早い段階で1機脱落するんだったら、ロンドンまでの距離を考えたときに、兵力不足だと判断したんだと思うわ。もう少し待てばあと5体の増援が来るはずだから、少し待機するという判断ね。


あと火星人から見れば、もっとすごい地球兵器があるかもしれないと警戒したのかもしれないわ。
実際のところ、これら12ポンド砲が地球兵器の最新鋭だし、ここからロンドンまでの行程でルート付近に兵営は1つしかないのよね(もっとも、このころには兵力は東方から十分補給されているとは思うけれど)。


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