『宇宙戦争』の全訳・英文法解説です。
第14章 第18段落

ロマンあふれる段落だぜ。
問題編
The Martians had been repulsed*; they were not invulnerable*. They had retreated* to their triangle of cylinders again, in the circle about Woking. Signallers* with heliographs were pushing forward upon them from all sides. Guns were in rapid transit* from Windsor, Portsmouth, Aldershot, Woolwich—even from the north; among others, long wire-guns of ninety-five tons from Woolwich. Altogether* one hundred and sixteen were in position or being hastily placed, chiefly covering London. Never (such, England, there, before, in, vast, been, a, had) or rapid concentration of military material.
repulse(<re+pulse)撃退する invulnerable(<in+vulner+able)無敵の retreat退却する signaller(<signal+er)通信兵 in transit輸送中で altogether合計
1. 緑のsignallers(通信兵)は何のために火星人の近くまで派遣されているの?
2. オレンジのthemが指しているものは?
3. 赤のthe northはどこらへん?
4. 青のothersが指しているものは?
5. 青アンダーラインの単語を並び替えると?
their triangle of cylinders

円筒宇宙船が着陸した3か所を作った三角形の区域のことですにゃ。

Guns ~ from Windsor, Portsmouth, Aldershot, Woolwich


まずはウィンザーだけど、ほぼほぼ「ウィンザー城」のイメージだよね。ウォーキングのほぼ真北にあるところだ。
ま、国王のお膝元ということで、兵営(barracks)が2つほど存在しているよ。


ポーツマスは第104話で軍港のトークをするときに出てきたね! 1900年現在、イギリス最大の軍港/海軍都市だよ!
バラックがいくつもあったり、海軍病院があったりするのも、goes without saying!
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the North

イギリスで「the North」というと、イングランド北部のことを指すことがあります。今回はこの意味です。だいたい以下の地図の赤色の範囲が「the North」にあたるそうですよ。

long wire-guns of ninety-five tons

なにっ「95トンの大砲」だと??

ものすごく巨大な砲ね。なにせ、1904年から王立砲兵隊(RA)に配備された「QF 13-pounder gun」でも総重量約1トンよ。その約100倍なんて…。


まあ、ドイツの列車砲グスタフなら余裕で勝てるんだが。
(1350トン)

グスタフは第二次世界大戦の列車砲じゃないの。
るーる違反よ。

グスタフはおいといて、この「95トンの砲」の現実的な可能性を考えると、海軍砲(naval gun)でしょうね。

なるほど。よーするに、戦艦についてる大砲だな。

戦艦大和の46センチ砲は150トンくらいですから、95トンくらいの砲があってもおかしくないですね。


Google Booksに、イギリス軍が1887年に発行した「Text-book of gunnery」がアーカイブされているから、今回はそれを参照してみよう。
https://books.google.co.jp/books?id=rp5DAAAAIAAJ&printsec=frontcover&redir_esc=y#v=onepage&q&f=true
以下の表は印刷されてるページで312ページ、Google Booksのページで329ページの「British Ordnance」一覧だ。


左上あたりに注目してくれ。110トンの16.25インチ砲が確認できる。
95トンの砲は調べた限りは存在しなかったが、重さくらいは架空の設定なんだろう。だから実質、この16.25インチ砲をモデルとして考えておけばよさそうだ。

16.25インチ海軍砲はこんなものだったらしいよ。


たしかに、ワイヤが用いられている(発射仰角を調整するため。重すぎて手動では調整できない)から、「wire-guns」といえそうだね。

ちょ、ちょっと待ちなさいよ。
そもそもなんで陸上戦闘で海軍砲がでてきてるのよ。

1900年ごろの海軍砲は普通に陸上戦闘でも使われていたぞ。
第二次ボーア戦争でも使われたって話は以前した気もする(第98話)。
以下の画像は、1899年、第二次ボーア戦争で海軍の6インチ砲が列車にのっている様子だ。列車砲になっているのか、それともどこかに運搬している途中なのかはわからないがな。


ともあれ、海(テムズ川)に面したウーリッチからなら、こうした海軍砲も持ってこれるっていうわけね。
解答編
<英文解釈記号ルール>
〔〕→関係詞句・節
【】→接続詞句・節
《》→挿入句・節
[ ] →名詞句・節
()→副詞句・節
〈〉→形容詞句・節
The Martians had been repulsed*; they were not invulnerable*. They had retreated* (to their triangle of cylinders again), (in the circle about Woking). Signallers* with heliographs were pushing (forward) (upon them) (from all sides). Guns were (in rapid transit* (from Windsor, Portsmouth, Aldershot, Woolwich—even from the north)); (among others), long wire-guns of ninety-five tons (from Woolwich). (Altogether*) one hundred and sixteen were (in position) or being hastily placed, (chiefly covering London). (Never before) (in England) had there been such a vast or rapid concentration of military material.
1. 緑のsignallers(通信兵)は、まあ、火星人の侵攻開始を報告するためというのが第一だと思うんですが、弾着確認・報告の役割もありますよね。この当時はGPS誘導とかはありませんので、弾着確認(目視)と修正射撃を繰り返すわけです。
2. オレンジのthemが指しているものは、the Martiansかな。
3. 赤のthe northは解説通り、イングランド北部(スコットランドはさすがに遠すぎると思います)かな。
4. 青のothersが指しているものは、gunsかな。
5. 青アンダーラインの単語を並び替えると上の通り。倒置ですね。in Englandの入れる位置は別解があるかもしれません。
全訳
火星軍は撃退されていた。無敵ってわけじゃないのだ。彼らは、ウォーキング一円の、宇宙船が作る三角地帯にまた撤退していった。ヘリオグラフを携えた通信兵は包囲するように前進していった。ウィンザー、ポーツマス、オールダーショット、ウーリッチ、さらにイングランド北部からも、大砲が急いで配備されていた。その中には、ウーリッチから運ばれてきた長砲身のワイヤ駆動式95トン海軍砲もあった。合計で116門が配置につくか、急いで配置されている最中だった。それらの砲は主にロンドンを防衛していた。イングランドにこんなにも大規模かつ急速に軍事物資が集められたのは史上初だった。


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