『宇宙戦争』の全訳・英文法解説です。
第6章 第10段落
前提知識

「群れ」について。

flock→ヒツジ・ヤギ・鳥など。
herd→ウシ・ウマ・ヒツジ・ヤギなど。大きな動物。
pack→オオカミ。
swarm→昆虫。「蠢く(うごめく)」もの。
shoal/school→魚。めだかの学校。
pod→クジラ・イルカなど。海生動物。

まあ、区別はわりと曖昧だったりするが。
問題編
“They’re coming!” a woman shrieked*, and incontinently* everyone was turning and pushing at those behind, in order to clear their way* to Woking again. They must have bolted* as blindly* as a flock* of sheep. Where the road grows narrow and black between the high banks* the crowd jammed*, and a desperate* struggle occurred. All that crowd did not escape; three persons at least, two women and a little girl, were crushed* and trampled* there, and left to die amid* the terror and the darkness.
shriek甲高い声で叫ぶ incontinentlyただちに clear one’s way道を開ける bolt急に駆け出す blindlyやみくもに flock群れ bank斜面 jam詰めかける desperate必死の struggle闘争 crush押しつぶす trample踏みつける(参考:be crushed (to death) ≒be trampled (to death) 圧死する) amid≒amidst中で
1. 緑のtheyが指すものは?
2. 青のthose behindの訳は?
3. 茶色のwhereの品詞は?
4. オレンジのgrowsの意味は?
5. 赤のandが繋いでるものは?
6. 青アンダーラインの訳は?
7. 赤アンダーラインの主語と動詞は?
8. ピンクのandが繋いでるものは?
9. 紫のto不定詞の用法は?

「Where the road grows narrow and black between the high banks* the crowd jammed*」はこんな様子。細い道に殺到して、圧死する人もいたってわけだ。

解答編
<英文解釈記号ルール>
〔〕→関係詞句・節
【】→接続詞句・節
《》→挿入句・節
[ ] →名詞句・節
()→副詞句・節
〈〉→形容詞句・節
“They’re coming!” a woman shrieked*, and (incontinently*) everyone was turning and pushing (at those behind), (in order to clear their way* to Woking again). They must have bolted* (as blindly* as a flock* of sheep). 【Where the road grows narrow and black (between the high banks*)】 the crowd jammed*, and a desperate* struggle occurred. All that crowd did not escape; three persons at least, 《two women and a little girl》, were crushed* and trampled* there, and left (to die (amid* the terror and the darkness)).
1. 緑のtheyが指すものは、火星人(Martians)ですね。文脈から判断しましょう。
2. 青のthoseが形容詞のthoseだとするならば、behindは名詞になります。でも名詞のbehindは「おしり」の婉曲表現です。この切羽詰まった状況でセクハラする人はいません。 ですから、ここのthoseは代名詞。言い換えると「the people」になるthoseでしょう。そしてbehindが後置修飾してると考えましょう。behindはabove, aheadなどと同じく1語でも後置修飾することがありますよね。
ちなみに、「後ろの人を押す」って変だなぁ(普通は「前の人を押す」)って思うかもしれませんが、「turning」で反転してますからね。turnする前に後ろにいた人を押したって考えるのがいいでしょう。
4. オレンジのgrowsの意味は「~になる」。21世紀では文語的ですが、grow Cで「(ゆっくりと)Cの状態になる」という意味ですね。ついgrow(育つ)のイメージで「大きくなる」って訳しがち。
5. 赤のandが繋いでるものは前後の2文です。
6. 青アンダーラインは、All…notっていう形があるのか戸惑いますが、文脈的に部分否定(全員が逃げられたわけではない)でとらえましょう。21世紀では、all…notは全部否定か部分否定か混乱するのでやめた方がいいとされています。
7. 赤アンダーラインの主語はthree persons、動詞はwere crushed, were trampled, were leftの3つですね。two women~little girlまでは挿入部(three personsを説明)です。ちなみにpersonの複数形をpersonsとするのは(21世紀では)大変かたい表現なので使ってはいけません。all~not, persons…ここら辺は19世紀の英語を感じます。
8. ピンクのandが繋いでるものは先述の通り、crushed and trampled と leftです。crushedとtrampledは意味上ひとかたまりで見てあげていいとおもいます。
9. 紫のto不定詞の用法は結果用法です。left見捨てられて→そのあと→die死んだ という時系列が感じられますからね。ここでは明らかに目的用法ではないですが、目的用法なのか結果用法なのかは、意外とどちらでもとれるものもあったりします。
全訳
「やつらが来てるわ!」ある女性が叫んだ。すぐにみんなは反転し、ウォーキングの方に進む道を再び開けるため、後ろにいた人を押していた。彼らは羊の群れと同じように盲目的に走り出したに違いない。高い斜面にはさまれて道が細く暗くなっているところに群衆は詰めかけた。そして必死な争いがおこった。その全員が逃げ延びたわけではなかった。少なくとも3人(2人の女性と1人の小さな女の子)はそこで押しつぶされ、踏みつけられ、見捨てられて恐怖と暗闇の中で死んでいった。

この段落もずいぶんえげつないなぁ

小さな子まで巻き込まれて…。たぶん合計5人くらいはここで圧死したのね。
レーザーによる犠牲者は40名程度(第77話)だから、この日の犠牲者の10%が人間によるものって考えると切ないわ…

…まだこれ、火星人の示威攻撃に過ぎないのよね。
悲劇はこれからよ。

これ、「The War of the Worlds」っていうタイトルだけど、宇宙戦争ドンパチやる物語じゃなくて、一方的な絶望が覆う救いのない物語だね…。タイトル詐欺じゃん。

まあな。ということで、悲しい終わり方をした第6章は終わり。次回から第7章だ。
再びわたしの時系列に戻り、ふらふらしながらターちゃん(わたしの奥さん)が待ってるお家に帰るお話。

この絶望の物語で「最後の」休息ね。

第1章の最後(第19話)といい、タージルムさんが出てくる回はどことなく現実離れした安心感があるよね。


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