『宇宙戦争』の全訳・英文法解説です。
第6章 第7段落
前提知識

いよいよ軍事系の話に入るぜやっほーい。

英国陸軍はずっと「英国紳士」的な古めかしい軍隊だったんだけど、インドやクリミアでの苦戦の経験や、普仏戦争の様子をもとに、19世紀後半にカードウェルやチルダースによって近代化改革が行われたってところよ。

…いままで散々この当時のイギリスを英国紳士的でのんきだって言ってきたけど、軍隊においてはちょっとずつ変化は始まってたってところね。

さて、そうした改革の中で兵士の数とともに増えてきたのが「barracks」(兵営)(普通、複数形で使う)。兵士の集団寮みたいなところだ。以下は王立砲兵(Royal Artillery)の兵営の写真。かつては4000名が収容されてたらしい。結構大きい方の兵営だな。


本段落中に出てくるbarracksは、明示はされてないけど、おそらく「Inkerman Barracks」(インカーマン兵営)ね。Queen’s Royal Surrey Regiment(サリー王立歩兵連隊)の本拠地となったとこ。Horsell Commonからだいたい1時間ちょっとのところにあるわ。



つづいて英国陸軍(British Army)の編成よ。
海軍・空軍はRoyal Navy, Royal Air Forceって言うけど、英国陸軍はRoyal Armyとは言わないことに注意ね。Royalは陸軍各部隊の名称につけられるのよ。「Royal Tank Regiment」とか。
下の表の赤文字の単語はこの小説で出てくるから、この機会に覚えておくといいわ。
この段落ではcompany(歩兵中隊)が出てくるわね。


…戦車のとこだけは知ってる。だいたい4両で小隊を作って、2両ずつお互い援護しながら交互に前進していくのが定石だし。

だな。ちなみに伝統的に機甲部隊は騎兵部隊に由来するから、この表では一緒に書いてるってことだ。

やっぱりわたしの馬車→戦車改造計画は正しいじゃないか

だから無理だって。

ともあれ、あくまでこの表は目安よ。時代や部隊などによって細かく変わってくるわ。
たとえば、砲兵の「troop」は普通は「battery」の半分の規模だけど、この小説の第12章で出てくるRoyal Horse Artillery(王立騎馬砲兵)での「troop」はこの表の「battery」に相当する規模なの。

「regiment」って一番クレイジーだよね。国によって全然規模が違ったり、イギリスの中でも連隊の中にある大隊の数が各連隊によって違ったりするし。しかも、歩兵連隊が1個歩兵大隊しかもってない場合は、歩兵連隊=歩兵大隊ってなっちゃうんだよね。

さらに、イギリスで砲兵中隊が数個集まった部隊は、21世紀では「連隊」だけど、1900年ごろは「旅団」。さらに昔は「大隊」っていう名前だったわ。もうわけわかんない。

…こういうのをもっと詳しく知りたい人は1898年のイギリス陸軍人事記録を見ることね。びっしりと300ページくらいあるからわたしは読んでないけど。結構重いよ↓
https://deriv.nls.uk/dcn23/1007/6315/100763158.23.pdf

誰が読むんだよ。

それじゃあ復習クイズ。
以下の画像の部隊規模は何かな?


歩兵部隊でだいたい500~600人いそうなので、答えは「battalion」だね。
後ろに見えるのが「barracks」だよ~。
問題編
Stephanie and Ogilvina, anticipating* some possibilities of a collision*, had telegraphed* from Horsell to the barracks as soon as the Martians emerged, for the help of a company of soldiers to protect these strange creatures from violence*. After that they returned to lead that ill-fated* advance. The description of their death, as it was seen by the crowd, tallies* very closely with my own impressions: the three puffs* of green smoke, the deep* humming* note*, and the flashes of flame.
anticipate予想する collision衝突 telegraph電報を打つ barracks兵営 violence暴力 ill-fated不運な tally一致する puffひと吹き deep低い hum機械がブーンと鳴る note音
1. ピンクのcollision(衝突)はどういうこと?
2. オレンジのtheyが指すものは?
3. 緑のthe descriptionは、いったい誰がしてる「叙述」なんだろうか?
4. 青のasの意味(用法)は?

「Stephanie and Ogilvina」ってあるけど、Hensleyさんは?

わたしはこのとき、自分の新聞社の方に電報を送るために駅に行ってるとこだったよ!
解答編
<英文解釈記号ルール>
〔〕→関係詞句・節
【】→接続詞句・節
《》→挿入句・節
[ ] →名詞句・節
()→副詞句・節
〈〉→形容詞句・節
Stephanie and Ogilvina, 《anticipating* some possibilities of a collision*》, had telegraphed* (from Horsell to the barracks) 【as soon as the Martians emerged】, (for the help of a company of soldiers (to protect these strange creatures from violence*)). (After that) they returned (to lead that ill-fated* advance). The description of their death, 《as it was seen (by the crowd)》, tallies* (very closely) (with my own impressions): the three puffs* of green smoke, the deep humming* note*, and the flashes of flame.
1. ピンクのcollision(衝突)は、集まった群衆と火星人が衝突することですね。ステファニーさんたちは、火星人が群衆に襲われるかもしれないって思ってたんです。
2. オレンジのtheyが指すものはStephanie and Ogilvinaです。
3. 緑のthe descriptionをしてる主語は、明示されてるわけではないんですが、the crowd(=まわりの群衆)だと考えていいでしょう。「The description tallies with my impressions」とありますから、「わたし」じゃなさそうですね(「わたしの印象がわたしの話に一致した」っていうのはおかしい)
4. 青のasの意味(用法)は、「~の限り」もしくは「~のような」でもいいかも。「as I see it」みたいに、asが状況のitとともに使われ、as far asと同じような意味を持つことがあります。または、「the world as we know it」みたいに、直前の名詞を修飾して「~ような」と訳すものでも意味が取れなくはないです。
分詞構文の強調で 「分詞+as it was」で強調を表すことがありますが、今回は順序がぎゃくですし…。
全訳
火星人が現れるとすぐに、ステファニーさんとオギルヴィーナちゃんは、地球人と火星人の衝突の可能性を予想して、ホーセルから兵営に電報を送った。この奇妙な生物を暴力から守るため、一個中隊の援軍を求めたのだ。その後、2人は不運な行進を率いるために戻った。
群衆が見たところの2人の死の様子は、わたし自身の印象ととてもよく一致している。3本の緑煙が上がり、機械のブーンという低い音がして、炎の閃光がはしったってことだ。

火星人を守るって目的だったにせよ、あなたたち、すぐに軍に連絡してたのね。

わたし、一応とはいえグリニッジ天文台の所長だからね?

そうね。今までいろいろとこの群衆と体制を批判してた節があったけど、みんなそれぞれそのときの最善の行動をとってたってことは疑わないわ。

…ちょっと今日は疲れたね。
最後はこういう英国軍歌(The British Grenadiers:英国擲弾兵)アレンジ(帝国音楽堂 さん)でもどうかしら?
※曲名のGrenadiersは「グロリアーナ」じゃなくて「グレナディアーズ」(<Grenade+ier)だからね。
https://youtu.be/jwMO0j6RHcA

ドイツにも似たタイトル(Lied der Panzergrenadiere:装甲擲弾兵の歌)の歌があったり。

そういえば British Grenadiersの神社アレンジもあったよな。

ほんとになんでもあるわね。


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