Girls & Martians 第108.5話「もっとイギリス軍解説です!」 【宇宙戦争】

GuP_宇宙戦争_段落ごと

本シリーズは『宇宙戦争』を詳細に読解し、当時の時代情勢を読み解くことを目的としています。
実験的な試みとして、一部の登場人物の名前と代名詞を書き換えていますが、その他の単語や文章は変更しておりません。

タージルム
タージルム

ということで、難解な前段落(第108話)を解き明かしていくわよ。

文章(再掲)

 (About eleven) a company of soldiers came through Horsell, and deployed* (along the edge of the common) (to form a cordon*). (Later) a second company marched* through Chobham (to deploy on the north side of the common). Several officers from the Inkerman barracks had been (on the common) (earlier in the day), and one, 《Major* Eden》, was reported to be missing. The colonel* of the regiment came (to the Chobham bridge) and was busy questioning the crowd (at midnight). The military authorities* were certainly alive to* the seriousness of the business. (About eleven), 《the next morning’s papers were able to say》, a squadron of hussars*, two Maxims*, and about four hundred men of the Cardigan regiment started from Aldershot.

11時ごろに、一個中隊がホーセルを通ってきて、ホーセル共有地の端に沿って展開し、封鎖した。その後、さらに一個中隊がチョブハムを行進し、ホーセル共有地の北側に布陣した。インカーマン兵営から来た数名の将校はその日早くから共有地にいた。将校の一人のエデン少佐は行方不明だと伝えられた。その連隊の大佐はチョブハム橋から来て、真夜中でも群衆に質問するのに忙しかった。軍当局は確実に事態の深刻さを認識していた。11時ごろに、カーディガンの大隊からの、1個騎兵中隊と2丁のマキシム機関銃、約400名の兵士がオールダーショットから進撃を開始した。

はじめに

ウェストリッジ
ウェストリッジ

今まではだいたいGoogle Mapをメインに使ってたけど、100年もすれば細かい部分が多少変化するものだ。
最近、Ordnance Survey社が1898年頃に発行した古地図(以下「OS古地図」と略す)を、スコットランド国会図書館がアーカイブしてくれているのを発見したから(https://maps.nls.uk/index.html)、細かい部分はこちらを主に使用していきたいと思う。

デナリス
デナリス

まずは、Woking Station中心の1/25000地図を4枚貼り合わせた画像を置いておくわ。

たぶんこのままだと字が小さすぎて見えないから、興味があったらいったん保存してから見てね。

「宇宙戦争」地名

ウェストリッジ
ウェストリッジ

本文中に出てくる地名にアンダーラインを引くと以下のようになるぞっ。

11時ごろに、一個中隊がホーセル(Horsell)を通ってきて、ホーセル共有地(Horsell Common)の端に沿って展開し、封鎖した。その後、さらに一個中隊がチョブハム(Chobham)を行進し、ホーセル共有地の北側に布陣した。インカーマン兵営(Inkerman Barracks)から来た数名の将校はその日早くから共有地にいた。将校の一人のエデン少佐は行方不明だと伝えられた。その連隊の大佐はチョブハム橋(Chobham Bridge≒Mim Bridge)から来て、真夜中でも群衆に質問するのに忙しかった。軍当局は確実に事態の深刻さを認識していた。11時ごろに、カーディガンの大隊からの、1個騎兵中隊と2丁のマキシム機関銃、約400名の兵士がオールダーショットから進撃を開始した。

タージルム
タージルム

赤アンダーラインの部分はOS古地図で反映できるわね。
青アンダーラインのオールダーショットだけはちょっと遠いの。

ヘンスリー
ヘンスリー

①ホーセル(Horsell)(紫ペン):1900年ごろはホーセルがウォーキング駅北側のメインエリアだね!(※ウォーキング駅ができてから、ウォーキングのメインが南→北にだんだん移っていくんだよ!)

オギルヴィーナ
オギルヴィーナ

②ホーセル共有地(Horsell Common)(緑ペン):いままで何回も出てきたけど、厳密には結構ぐにゃぐにゃした形してるんだぜ。

ステファニー
ステファニー

③チョブハム(Chobham)(紫ペン):Horsell Common北西の都市だわ。

タージルム
タージルム

④インカーマン兵営(Inkerman Barracks)(赤ペン):のちほどまた詳細に述べるけど、ここから最初に兵隊が出るの。1個中隊(青ペン)は普通にHorsellを行進して共有地南側に布陣、もう1個の中隊(水色ペン)(連隊の大佐がいるからこっちが本隊よね)はChobhamで行進してから共有地北側に布陣して、共有地を囲むのよ。

HorsellとChobhamを行進するのは、住民に対しての示威行為の意味もあるのかしら。

デナリス
デナリス

④チョブハム橋(Chobham Bridge)(黄色ペン):実際にはMim Bridgeって呼ばれてたそうよ。

ウェストリッジ
ウェストリッジ

最後に、オールダーショット(Aldershot)だけど、Wokingから結構離れてて、徒歩でおよそ4~5時間かかるとこにある都市。ここはあとで説明するけど軍事都市だ。かなり大きな規模の軍隊を出せるぞ。
ちなみにAldershotより近いところにある兵営は、インカーマン兵営を除くと上の地図の青い星マークのところ(2か所)だけだ。

イギリス陸軍編制と陸軍階級

11時ごろに、一個中隊(company)がホーセルを通ってきて、ホーセル共有地の端に沿って展開し、封鎖した。その後、さらに一個中隊がチョブハムを行進し、ホーセル共有地の北側に布陣した。インカーマン兵営から来た数名の将校(officer)はその日早くから共有地にいた。将校の一人のエデン少佐(Major)は行方不明だと伝えられた。その連隊(regiment)の大佐はチョブハム橋から来て、真夜中でも群衆に質問するのに忙しかった。軍当局(military authorities)は確実に事態の深刻さを認識していた。11時ごろに、カーディガンの大隊からの、1個騎兵中隊と2丁のマキシム機関銃、約400名の兵士がオールダーショットから進撃を開始した。

ヘンスリー
ヘンスリー

それじゃあまずは、何度も見たこの表を出しておくよ!
イギリス陸軍公式も参照してね!https://www.nam.ac.uk/explore/army-organisation
今回出てくるのは、歩兵中隊(company)と、連隊(regiment)だよ!

オギルヴィーナ
オギルヴィーナ

ホーセル共有地を現在2個歩兵中隊(計300~400人程度)で取り囲んでるってことだな。

そして、オールダーショットから1個騎兵中隊と400人の兵士が来てる。基本的に、1個騎兵中隊は150~200騎で構成される(参考)。だから騎兵:歩兵=1:2ってことだな。

デナリス
デナリス

次に、「officer」=「将校・士官」というのは、部隊の指揮官ね。「soldier」=「兵」と対比される存在よ。
士官のランクだけど、こちらもイギリス陸軍の公式サイトを見るのが一番いいと思うわ。https://www.army.mod.uk/who-we-are/our-people/ranks/

でもいちおう、図もかいておくね。対応する将校が、その部隊を率いる階級よ。たとえば「小隊」は「中尉」が指揮するの。

オギルヴィーナ
オギルヴィーナ

1900年ごろは「Brigadier General」(准将)(Brigadierとほぼ同じ)っていう階級もあって、そっちがこの小説に出てきたりするけど、全般的にはほとんど変わらないから大丈夫だぜ。

タージルム
タージルム

そうそう、「colonel」の読み方は「カーネル」。「コロネル」ではないから気を付けましょ。
それに、「lieutenant」の読み方はイギリスでは「レフテナント」、アメリカでは「ルーテナント」と、結構違うので注意してね。

ヘンスリー
ヘンスリー

「カーネル」の「r」の発音は「l」と「r」が混ざってるからわかるんだけど、イギリスの「レフテナント」の「f」の発音どっから出てきたのよ!

タージルム
タージルム

これが伝統だもの。

ウェストリッジ
ウェストリッジ

ま、ドイツ語とかの名詞の性もそういうもんだし。

ともあれ、最後に「military authorities」(軍当局)だが、もちろん軍本部はロンドンにあるぞ。

陸軍本部(陸軍省)は「War Office」っていう名前だ。ちなみに海軍本部は「Admiralty」(「アドミラルティ・コード」とかの用語で聞いたことがあるかも)。
少し前まで(1858年まで)、Horse Guardsっていう建物が陸軍省だったんだが、以下の紫ペンの場所に移転したぞ。

Inkerman Barracks(インカーマン兵営)

タージルム
タージルム

先ほども出てきた通り、このインカーマン兵営にいる部隊が、ホーセル共有地に真っ先に駆けつける部隊よ。第82話でも少し紹介したわ。

タージルム
タージルム

2番目の記事の方で

(in 1895)「The first regiment to be quartered in the barracks was the 2nd Battalion of the Queen’s Royal (West Surrey) Regiment . The next year, the barracks were occupied by the East Surrey Regiment, followed by the Royal Northern Reserves Regiment (1900), the Royal Berkshire Regiment (1902), the Royal Scots (1904), the King’s Liverpool Regiment (1906) and the East Lancashire Regiment (1908).」

と書いてるから、基本的には連隊1個分(≒大隊1個~2個分)の部隊が駐留していたと見てよさそうかな。

ウェストリッジ
ウェストリッジ

で、先述のように、連隊の指揮官は大佐(colonel)だから、この小説中に登場してることについても整合性が取れる。インカーマン兵営のトップの大佐みずから群衆に質問を繰り返すほど、陸軍が気合を入れて火星人に立ち向かっているということがわかるぞっ。

11時ごろに、一個中隊がホーセルを通ってきて、ホーセル共有地の端に沿って展開し、封鎖した。その後、さらに一個中隊がチョブハムを行進し、ホーセル共有地の北側に布陣した。インカーマン兵営から来た数名の将校はその日早くから共有地にいた。将校の一人のエデン少佐は行方不明だと伝えられた。その連隊の大佐はチョブハム橋から来て、真夜中でも群衆に質問するのに忙しかった。軍当局は確実に事態の深刻さを認識していた。11時ごろに、カーディガンの大隊からの、1個騎兵中隊と2丁のマキシム機関銃、約400名の兵士がオールダーショットから進撃を開始した。

Aldershot(オールダーショット)軍事都市

オギルヴィーナ
オギルヴィーナ

「軍事都市」と書くのはやや物騒かもしれないが、事実、オールダーショットは「Home of the British Army」とも言われて、もともと小さい村だったが陸軍のおかげで発展したような都市だ。
なお、読み方について、アルダーショットとかオルダーショットとかの表記ゆれがあるが、「オールダーショット」が一番いいっぽい。

デナリス
デナリス

以下のAldershotの地図を見てわかるとおり、相当大きい基地(赤枠内)があるんだよね。
陸軍の地区司令部(District Commands)が置かれて、師団・軍団規模の部隊が常駐していたの。

詳しくは、以下のリンクのデータベースを参照。平時では10~15個の連隊or大隊がいることがわかるわ(※1900年あたりは第2次ボーア戦争のため駐屯部隊数が少ない)。
https://www.friendsofthealdershotmilitarymuseum.org.uk/BarrackFinder.html

11th Hussars Regiment(第11騎兵大隊)

11時ごろに、一個中隊がホーセルを通ってきて、ホーセル共有地の端に沿って展開し、封鎖した。その後、さらに一個中隊がチョブハムを行進し、ホーセル共有地の北側に布陣した。インカーマン兵営から来た数名の将校はその日早くから共有地にいた。将校の一人のエデン少佐は行方不明だと伝えられた。その連隊の大佐はチョブハム橋から来て、真夜中でも群衆に質問するのに忙しかった。軍当局は確実に事態の深刻さを認識していた。11時ごろに、カーディガンの大隊(the Cardigan regiment)からの、1個騎兵中隊と2丁のマキシム機関銃、約400名の兵士がオールダーショットから進撃を開始した。

タージルム
タージルム

それでは最大の難所「the Cardigan regiment」(第11騎兵大隊)について。

タージルム
タージルム

まず、「regiment」っていう単語は通常「連隊」と訳して何ら問題もないし、今回も「連隊」と訳してOKなんだけど、あえて「大隊」としてるわ。

というのも、騎兵においては中隊(squadron)が集まったら「regiment」になるんだけど、歩兵では大隊(battlion)が集まって「regiment」になるのね。ここでは騎兵と歩兵の混合部隊だしちょっと混乱しやすいわ。
実際、「the Cardigan regiment」は騎兵だから、大隊規模だよってことを言いたいためにあえて「大隊」と訳してるってこと。

ウェストリッジ
ウェストリッジ

次に「the Cardigan」とは何なんだろ、ってことについて。

オギルヴィーナ
オギルヴィーナ

Royal Cardigan Militia」じゃないの?
ウェールズの「Cardigan」に本拠地を置く歩兵連隊があるぞ。

ウェストリッジ
ウェストリッジ

そんな遠いとこからわざわざ来るわけないじゃないか。


これは、英国の王立騎兵大隊の一つ、「11th Hussars」。

「Cardigan」というのは人名(正確に言えば伯爵位)で、11th Hussarsを以前率いていた指揮官。19C半ばのクリミア戦争において、バラクラヴァの戦いで無謀な騎馬突撃(the Charge of the Light Brigade)を行って、戦果はあげたものの損耗率1/3という大きな損害を出したことで有名だ(※1868年に死去)。
https://horsepowermuseum.co.uk/the-11th-hussars-in-the-charge-of-the-light-brigade-2/

11th Hussars (Prince Albert’s Own) | National Army Museum
This cavalry unit was raised in 1715. It continued in British Army service until 1969, when it merged with the 10th Huss...
https://www.nam.ac.uk/explore/11th-hussars-prince-alberts-own
バラクラヴァの戦いで、カーディガン率いる第11騎兵大隊がロシア軍に突撃するようす①
バラクラヴァの戦いで、カーディガン率いる第11騎兵大隊がロシア軍に突撃するようす②
ヘンスリー
ヘンスリー

ここで「11th Hussars」と書いてもいまいち読者はピンとこない。でも「Cardigan」って書くことで、「あのカーディガンさんの部隊ね」っていう風に読者がわかるようにしてるってことだね! 
…ある意味では、大損害を出すことの伏線ってことかな。

デナリス
デナリス

ちなみに、洋服の「カーディガン」はこの人が語源。

タージルム
タージルム

あと、ご存じの通り騎馬は機械化される運命にあるんだけど、第11騎兵大隊は1929年、世界ではじめて機械化された騎兵部隊になるわ。
https://horsepowermuseum.co.uk/the-11th-hussars-mechanisation/

Mechanisation of cavalry regiments begins with the 11th Hussars – Horse Power Museum

Maxim(マキシム機関銃)

11時ごろに、一個中隊がホーセルを通ってきて、ホーセル共有地の端に沿って展開し、封鎖した。その後、さらに一個中隊がチョブハムを行進し、ホーセル共有地の北側に布陣した。インカーマン兵営から来た数名の将校はその日早くから共有地にいた。将校の一人のエデン少佐は行方不明だと伝えられた。その連隊の大佐はチョブハム橋から来て、真夜中でも群衆に質問するのに忙しかった。軍当局は確実に事態の深刻さを認識していた。11時ごろに、カーディガンの大隊からの、1個騎兵中隊と2丁のマキシム機関銃(Maxim)、約400名の兵士がオールダーショットから進撃を開始した。

タージルム
タージルム

「Maxim」はマキシム機関銃ね。
1885年くらいにイギリスで実用化された最新鋭の重機関銃。反動を利用して弾を装填するという革新的な銃で、毎分500~600発の銃弾を撃てたの。

ヘンスリー
ヘンスリー

基本的には3~4人で運用するよ。

赤軍にて。世界中で使われるようになった。
ウェストリッジ
ウェストリッジ

この物語では「two Maxims」って書いてあって、「たった2門かよ」って思うかもしれないが、当時のライフル何十挺分にも匹敵する火力だからよほどのことがない限り十分だ。
植民地の先住民との戦争では「マキシム機関銃のおかげで100倍の敵を倒した」との記述があったりするし(さすがに100倍は嘘っぽいが)。

タージルム
タージルム

マキシム機関銃は、あの有名なビッカース重機関銃に進化して、2度の世界大戦で使われ続けたわ。

第一次世界大戦で用いられるヴィッカース重機関銃
タージルム
タージルム

他にも、マキシム機関銃の口径を大きくした「QF 1ポンド砲(ポンポン砲)」というのが作られて、第二次ボーア戦争(1900年ごろ)でも広く使われたの。

南アフリカで1901年ごろ、QF1ポンド砲とオーストラリア人兵士
デナリス
デナリス

馬車の後ろに機関銃を取り付けて、機動性を上げた「タチャンカ」もそこそこ有名よね。

オギルヴィーナ
オギルヴィーナ

これだ、これだ。
馬車を戦車にはできなかったけど、タチャンカを量産すればいいんだ!

ウェストリッジ
ウェストリッジ

馬車機動部隊は一つあるかもな。特に撤退戦には強そうだ。

ただレーザー砲から逃れられるのがどれくらいいるかって話だが…。

軍服

オギルヴィーナ
オギルヴィーナ

いつも思うんだけど、イギリスの軍服基本的にレッドで派手だよな。
11th Hussarsは真っ赤なズボンはいてるし。

© Mary Evans / Pharcide  
https://www.mediastorehouse.co.uk
/mary-evans-prints-online/new-images-august-2021
/11th-hussars-balaclava-charge-light-brigade-23094806.html
タージルム
タージルム

そうね。たしかにイギリスの軍服は赤いわ。St. Glorianaもそうね。紅茶の色よ(?)。
結構目立つ色だし、比較的染料が安くて手に入れやすかったっていう面もあるわ。

ステファニー
ステファニー

真っ赤な服を着てたせいで、ボーア戦争では敵狙撃手にことごとく撃たれたんだけどね。
まだこの当時は「迷彩服」なんて概念がなかったのよ。

ウェストリッジ
ウェストリッジ

ライヒドイツは黒だっ。世界で一番かっこいい。

ともあれ、そろそろ終わろうか。
おつかれ。次回から元に戻るぞ。

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